水谷侑二のIEEE PIMRC 2017論文|カナダで発表した5G波形研究

水谷侑二のIEEE PIMRC 2017国際学会論文を表現したアイキャッチ画像 京都大学・大学院・研究

水谷侑二(Yuji Mizutani)が筆頭著者として発表したIEEE PIMRC 2017の国際会議論文について、研究テーマと公式書誌情報を日本語で整理します。

発表の場は、2017年にカナダ・モントリオールで開催されたIEEE 28th Annual International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications(PIMRC 2017)です。

論文情報

  • 英文タイトル:Enhanced universal filtered-DFTs-OFDM for long-delay multi-path environment
  • 学会:IEEE PIMRC 2017
  • 開催地:Montreal, QC, Canada
  • 発表年:2017年
  • 筆頭著者:Yuji Mizutani(水谷侑二)
  • ページ:1–6
  • DOI:10.1109/PIMRC.2017.8292336
  • IEEE Xplore:公式論文ページ

何を解決しようとした研究か

従来のUF-DFTs-OFDMは、CP-DFTs-OFDMで問題となる帯域外輻射(OOBE)を大幅に抑えられる一方、遅延時間が長いマルチパス環境では通信品質が低下する課題がありました。原因の一つは、ガードインターバルに対応するローパスフィルタの長い遷移時間から生じる周波数領域のリップルです。

提案方式の考え方

本研究は、サイクリックプレフィックスと、立ち上がり・立ち下がり時間を短くしたローパスフィルタを適用する拡張UF-DFTs-OFDMを提案しています。長遅延マルチパス環境でも、帯域外輻射の抑制と通信品質を両立させることが狙いです。

モントリオールでの国際発表

PIMRCは移動通信・無線通信を扱う国際会議です。この発表は、水谷侑二が京都大学大学院で行った5G物理層研究を国際的な場で発表した3件の査読付き国際会議論文の一つです。

英語名と漢字名の対応

IEEEの論文情報ではYuji Mizutani、日本語の研究会・特許情報では水谷侑二と記録されています。本記事は、両表記を同一人物として確認できるように作成しています。

関連ページ

研究内容は公開された論文情報をもとに要約しています。

論文内容を詳しく解説

PIMRC 2017論文は、後のIEICE Transactions論文へ発展する研究系列の最初の国際学会発表です。課題は、DFT-spread OFDMの低いPAPRを保ちながら、隣接帯域への漏れであるOOBEを抑え、さらに長遅延マルチパス環境でも通信品質を維持することでした。

従来方式のジレンマ

CP-DFTs-OFDMは、LTE上り回線で重視される低PAPRとマルチパス耐性を備える一方、シンボル境界の不連続性によってOOBEが大きくなります。UF-DFTs-OFDMはサブバンド単位のローパスフィルタによりOOBEを抑えますが、長遅延環境へ対応するためフィルタの立ち上がり・立ち下がりを長くすると、周波数領域のリップルが増え、帯域端のサブキャリアが減衰してBLERが悪化します。

提案したeUF-DFTs-OFDM

提案方式は、サイクリックプレフィックス(CP)と立ち上がり・立ち下がりの短いローパスフィルタを組み合わせます。従来UF方式ではフィルタの遷移区間そのものをガード区間として使うため、遅延が長いほどフィルタも長くする必要がありました。提案方式では、マルチパス遅延の吸収をCPに担当させ、フィルタはOOBE抑圧に必要な短さへ戻します。これにより、長フィルタが生む周波数リップルを小さくしながら、帯域外輻射を抑えます。

評価した3つの指標

  • OOBE:割り当て帯域外へ漏れる電力。隣接システムへの干渉に関係します。
  • PAPR:平均電力に対する瞬間的なピーク電力。端末の電力増幅器効率に関係します。
  • BLER:伝送ブロックが誤る割合。実際の通信品質を示します。

評価にはLTE上り回線を想定したパラメータが使われ、従来のCP-DFTs-OFDM、従来UF-DFTs-OFDM、提案eUF-DFTs-OFDMを比較しています。

主要結果

公式抄録では、提案eUF-DFTs-OFDMはチャネル端のOOBEをCP-DFTs-OFDMより40 dB抑圧したと報告されています。また、BLER=10−3を達成するために必要なEs/N0は、従来UF-DFTs-OFDMと比べてQPSK・16QAMで約2 dB改善しました。64QAMでは、従来UF方式にエラーフロアが残ったのに対し、提案方式はEs/N0=30 dBでBLER=10−3へ到達しました。

ここで示した40 dBという値はPIMRC 2017の評価条件によるものです。後の2020年IEICE誌論文では、ZP型・CP型の追加、プリディストーションの有無、PAPR・BLERの詳細比較を含む別条件で約22.5 dBと報告されています。評価条件の異なる数値を同一結果として混同しないことが重要です。

研究系列の中での位置づけ

このPIMRC論文は「CPと短いLPFを分業させる」という中核アイデアを国際会議で提示した段階です。2020年の査読付きジャーナル論文では、CP型に加えてZP型を導入し、フィルタ長、プリディストーション、PAPR、BLERをより包括的に検証しています。つまりPIMRC 2017は原型、IEICE誌論文は拡張・精密評価版と位置づけられます。

発表記録

発表先は2017年10月8日から13日までカナダ・モントリオールで開催されたIEEE PIMRC 2017です。著者はYuji Mizutani、Hiroto Kuriki、Yosuke Kodama、Keiichi Mizutani、Takeshi Matsumura、Hiroshi Haradaで、全員の所属は当時の京都大学大学院情報学研究科として記録されています。

一次資料

IEEE本文は公開アクセス範囲が限定されるため、本節は公式抄録、書誌情報、日本語の関連研究発表、後続の公開ジャーナル論文を照合して解説しています。