水谷侑二(Yuji Mizutani)が米国ラスベガスで発表したIEEE CCNC 2019論文を、日本語で分かりやすく整理します。
正式タイトルは「A Low-pass Filtered Time-domain Window for DFTs-OFDM to Reduce Out-of-band Emission with Low Complexity」です。
論文情報
- 学会:2019 IEEE 16th Annual Consumer Communications & Networking Conference(CCNC)
- 開催地:Las Vegas, NV, USA
- 発表年:2019年
- 筆頭著者:Yuji Mizutani(水谷侑二)
- DOI:10.1109/CCNC.2019.8651816
- IEEE Xplore:公式論文ページ
研究の背景
eUF-DFTs-OFDMは、ピーク対平均電力比(PAPR)を低く保ちながら帯域外輻射(OOBE)を大幅に抑制できる方式ですが、ローパスフィルタの時間領域畳み込みにより実装の計算量が大きくなる課題がありました。
提案した時間領域窓
本研究では、eUF-DFTs-OFDMで用いるローパスフィルタの時間応答を利用し、UTW-DFTs-OFDMへ適用する新しい時間領域窓関数を提案しています。帯域外輻射、PAPR、ブロック誤り率(BLER)、実装計算量をLTE上り回線の条件で評価しました。
研究結果の要点
公開された論文概要では、波形整形に必要な乗算器数を大幅に減らしながら、eUF-DFTs-OFDMとほぼ同等の性能を達成したと報告されています。性能だけでなく、実装時の複雑さまで含めて検討した点が特徴です。
ラスベガスでの国際学会発表
この発表は、水谷侑二が京都大学大学院で行った3件の査読付き国際会議発表のうち、2019年に米国で発表した成果です。英語論文の著者名はYuji Mizutaniですが、日本語名の水谷侑二と同一人物です。
関連ページ
本記事はIEEEおよびCiNii Researchの公開書誌情報・論文概要をもとに要約しています。
論文の技術内容を詳しく解説
CCNC 2019論文は、eUF-DFTs-OFDMが持つ強いOOBE抑圧性能を、サブバンドごとの多数のフィルタ演算を行わずに再現することを目的としています。提案の核心は、eUF方式で使うローパスフィルタの時間応答を、UTW-DFTs-OFDMの時間窓へ組み込むことです。
従来eUF方式の性能と計算量
eUF-DFTs-OFDMは、帯域を複数のサブバンドへ分割し、それぞれのIDFT出力へローパスフィルタを畳み込んだ後に合成します。OOBE、PAPR、BLERのバランスは良好ですが、サブバンド数をB、フィルタ長をLFとすると、波形整形に必要な乗算器数は概ねB×LFとなります。LTE 5 MHzの例ではB=25、LF=37で、925個の乗算器に相当します。
提案するローパスフィルタ型時間窓
提案方式は、DFT、サブキャリア割当、IFFT、CP/CS付加の後で、一つの時間窓をシンボル全体へ乗算します。この窓は、ローパスフィルタと基礎となる時間窓を事前に畳み込んで作り、係数をメモリへ保存します。送信時にフィルタの畳み込みを毎回行わないため、波形整形に必要な追加乗算器を1個へ集約できます。
なぜ同じような波形が得られるのか
時間領域の畳み込みは、周波数領域では乗算に対応します。eUF方式がサブバンド信号へ施していたLPFの効果を時間窓の係数へ事前に取り込むことで、送信信号のシンボル境界を滑らかにし、周波数サイドローブを抑えます。つまり「毎回フィルタを計算する処理」を「準備済みの係数を掛ける処理」へ置き換えたことが低複雑度化のポイントです。
評価と結果
論文はLTE上り回線を想定し、提案UTW-DFTs-OFDM、eUF-DFTs-OFDM、従来CP-DFTs-OFDMについて、OOBE、PAPR、BLER、実装複雑度を比較しています。公開抄録では、提案方式がeUF方式とほぼ同じ送受信性能を保ちながら、必要な乗算器数を大幅に削減できたと報告されています。
同一技術を詳述する公開特許の評価では、提案UTW方式とeUF方式はPAPR・BLERがほぼ同等で、双方ともCP-DFTs-OFDMよりチャネル端のOOBEを約20 dB改善しました。一方、変調のための追加乗算器はeUF方式の925個に対して提案方式は1個です。これにより、端末実装で重要な回路規模・計算量を大きく減らしながら、周波数利用効率に関係するOOBE抑圧を維持できることを示しました。
実装上の意味
携帯端末では、乗算器数が増えるほど回路面積、消費電力、処理遅延が増えやすくなります。提案方式は時間窓係数をルックアップテーブルとして保存し、スケジューラなどの制御部から窓の種類、遷移長、正規化係数を選択できる構成を想定しています。そのため、高性能なフィルタ型波形を、既存のDFTs-OFDM送信機へ比較的小さな追加処理で組み込む考え方として評価できます。
WPMC論文・特許との関係
CCNC 2019は矩形窓とLPFの畳み込みを中心に、eUF方式と同等の特性を低複雑度で得る点を短く報告した2ページ論文です。WPMC 2018はRaised-Cosine WindowとLPFを組み合わせたf-RCWを詳しく評価し、国際公開特許WO2020105481A1は、矩形窓・RCWを含む「任意の時間窓と任意のフィルタを事前に畳み込む」という一般化された構成を送信装置・送信方法として開示しています。
一次資料
本節はIEEE公式抄録・書誌情報と、同一技術を詳述する公開特許・京都大学の学位関連資料を照合して解説しています。











