水谷侑二のWPMC 2018論文|タイで発表したUTW-DFTs-OFDM研究

水谷侑二のWPMC 2018国際学会論文を表現したアイキャッチ画像 京都大学・大学院・研究

水谷侑二(Yuji Mizutani)が2018年にタイ・チェンライで発表した国際会議論文「A Low Pass Filtered-Raised-Cosine Window for UTW-DFTs-OFDM」を日本語で紹介します。

この論文は、21st International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications(WPMC 2018)で発表された査読付き国際会議論文です。

論文情報

  • 英文タイトル:A Low Pass Filtered-Raised-Cosine Window for UTW-DFTs-OFDM
  • 学会:WPMC 2018
  • 開催地:Chiang Rai, Thailand
  • 発表年:2018年
  • 筆頭著者:Yuji Mizutani(水谷侑二)
  • 掲載ページ:641–646
  • DOI:10.1109/WPMC.2018.8713090
  • IEEE Xplore:公式論文ページ

研究テーマを日本語で整理

タイトルを直訳すると「UTW-DFTs-OFDMのためのローパスフィルタ型Raised-Cosine窓」です。無線信号の時間波形へ適用する窓関数を工夫し、周波数帯域外への不要な放射を抑えながら、実装面とのバランスを検討する研究領域に位置づけられます。

UTW-DFTs-OFDMとは

DFTs-OFDMは、携帯電話の上り回線などで用いられる伝送方式に関係する技術です。UTWは時間領域の窓処理を利用し、シンボル境界で生じる不連続性を滑らかにすることで、帯域外輻射を抑えることを目指します。本研究ではRaised-Cosine窓とローパスフィルタを組み合わせた波形設計を扱っています。

京都大学大学院での研究成果

水谷侑二は京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻で、5Gの物理層と波形整形技術を研究しました。WPMC 2018は、カナダのPIMRC 2017、米国のCCNC 2019と並ぶ3件の国際会議発表の一つです。

氏名の表記

論文ではYuji Mizutani、日本語では水谷侑二と表記されます。本記事では、検索時に両方の表記から同一の研究成果へ到達できるよう、正式タイトルとDOIを併記しています。

関連ページ

本記事は公式の書誌情報をもとに、研究テーマを一般向けに要約したものです。

論文の内容を日本語で詳しく説明

WPMC 2018論文のテーマは、UTW-DFTs-OFDMの時間窓を改良し、従来のRaised-Cosine Window(RCW)より短い遷移区間で、さらに強い帯域外輻射(OOBE)抑圧を得ることです。提案した時間窓は、RCWにローパスフィルタを畳み込んで生成するため、filtered-RCW(f-RCW)と呼ばれます。

UTW-DFTs-OFDMと時間窓

OFDM系信号のOOBEは、隣り合うシンボルの境界で波形が急に変化することから生じます。UTW-DFTs-OFDMは、各シンボルの始端と終端へ時間窓を掛けて変化を滑らかにし、周波数領域のサイドローブを小さくします。サブバンドごとのフィルタリングを使わないため、低PAPRと比較的低い実装複雑度を保てる点が利点です。

従来RCWの限界

一般的なRaised-Cosine Windowは、遷移区間を長くすればOOBEを強く抑えられます。しかし遷移区間が長すぎると有効なデータ部分へ歪みが広がり、特に16QAMや64QAMのような高次変調でBLERが悪化します。つまり「OOBEをもっと下げたい」と「通信品質を守りたい」がトレードオフになります。

提案f-RCWの作り方

f-RCWは、時間領域で設計したRCWに、周波数領域の帯域制限を担うDolph–Chebyshev型ローパスフィルタをあらかじめ畳み込んで作ります。実際の送信時には、この計算済みの窓係数を信号へ乗算します。RCWがシンボル境界の不連続性を滑らかにし、LPF成分がサイドローブを直接小さくするため、同じ遷移長でも従来RCWより強いOOBE抑圧が得られます。

長遅延環境での評価

評価にはLTE上り回線パラメータと、最大遅延5.0マイクロ秒の3GPP Extended Typical Urban(ETU)モデルが使われました。通常CPではなく拡張CPを用い、従来CP-DFTs-OFDM、従来RCW、提案f-RCWについて、OOBE、PAPR、BLERを比較しています。

OOBEの結果

64QAMを含む評価で、提案f-RCWは従来RCWに対し、チャネル端(中心周波数から2.5 MHz)で約12 dB、2.65 MHzより外側の領域で約40 dBの追加抑圧を示しました。CP-DFTs-OFDMに対しては、条件によってチャネル端で最大82 dB、2.65 MHzより外側で最大150 dBの改善が示されています。これは絶対的な一般値ではなく、論文の窓長・評価帯域・分解能に基づく比較値です。

PAPRとBLERの結果

PAPRは、同じ窓遷移長であればf-RCWと従来RCWがほぼ同等でした。BLERについては、窓遷移長を有効シンボル長の4分の1以下に保つ条件で、変調方式にかかわらず従来RCWと同等の通信品質を維持しながら、OOBEをチャネル端で約12 dB改善できると結論づけられています。

OOBEとBLERを同時に評価した結果では、BLER=10−3を達成するEs/N0の劣化をQPSKで0.8 dB、16QAMで0.1 dB、64QAMで0.2 dBまで許容した場合、CP-DFTs-OFDMよりチャネル端のOOBEをそれぞれ約90 dB、75 dB、65 dB改善し、従来RCWに対してはいずれも約12 dB改善できると示されています。

この論文の意義

重要なのは、時間窓を「既存の窓関数」だけで完結させず、フィルタと窓を事前に畳み込んだ一つの係数列として設計した点です。送信時の処理は窓係数の乗算に集約できるため、厳しい帯域制限と低い実装負荷を両立する方向を示しました。この考え方は翌年のCCNC 2019論文と、国際公開特許WO2020105481A1へつながります。

一次資料

IEEE本文の公開アクセス範囲が限定されるため、本節は公式抄録・書誌情報と、同一技術を詳述する公開特許・京都大学の学位関連資料を照合して再構成しています。